抽象画に挑戦
抽象とは「事物や観念から共通の属性を抜き出し、一般的概念としてとらえること。」とあります。簡単に云えば、
ということができる訳です。
これが抽象化です。
抽象化で一番分かり安い画家のモンドリアンのお話をしましょう。
モンドリアン(1872年〜1944年)の方法
 モンドリアンは、オランダの人で、最初は写実的な風景画家でした。でも、当時流行した神秘主義の影響で不思議なものに興味を持つようになり、自然主義的であった絵が段々変化していきました。モンドリアンの抽象化の方法で最も解り安いものに樹木の連作があります。
 最初の絵は現実にある木の枝に沿って描写されている写実的な絵なのですが、段々と細かな描写や斜めの枝が省略されていき、やがては縦と横の線になるというものです。

モンドリアン
<神秘主義>人間の知力ではわからない理論や認識を超越した事柄を大切に考える方法

ピカソとブラックのキュビズム
 この時代の革新的な画家達は、それまでの古典主義的な物の見方に限界を感じ、新しい方法を模索していました。そして、ピカソやブラックは、キュビズムという方法を発見するのです。それはこども達が絵を描くやり方にヒントを得たもので、多視点的描法というものです。いろんな角度から見た物を一つの画面で表現するというもので、それまでの古典主義的な表現から云えば、絶対にやってはいけないことなのでした。
 この話については、たくさんの画家がいて長くなるので、代表的な画家達のそれぞれの方法のみを書いておきます。ご質問があれば個人的にお話しいたします。

ピカソ


ブラック
マレービッチの 絶対主義
カンジンスキー の 点・線・面
ポロックの オートマチズム
バーネットニューマンの ミクロ&マクロ方式

ポロック

マレービッチ

 さてここで、何故抽象化なのかという疑問が沸いて来ますよね。
 人は生まれて、3才くらいまで、自分を取り巻くもののなかで、渾然一体の状態(未分化)で生活しています。そして、自分に一番身近かな人や物の認識により分化が始まります。やがて、様々な経験や認識等の学習により、知力(コード)を勝ち取っていく訳です。このように見て来ると、大袈裟に云えば、人間の歴史とは、無知の克服の歴史と云えるかも知れませんね。
 しかし、「ちょっと待って下さい。」というのが抽象画家の提案かも知れません。
 世の中のこと、本当のことを云えば、結構解らないことだらけだと思いませんか。人は解らないものに出くわすと、無意識の内に直感を働かせています。みなさんはカミナリの原理、知っていますよね。でも、科学で解明できなかった時代の人たちのカミナリに対する気持ちを想像してみて下さい。本能的に身の危険を感じた人達は、直感を働かせて自分の身を守ろうとしたはずです。
 1から10まで知らないと気がすまないあなたや、1から10まで知ろうと焦っているあなたに、抽象画を見たり、制作したりすることをお奨めいたします。
 解らないことや、不安に思っていることと、そのままの姿で付き合ってみませんか。それが、抽象画を鑑賞したり制作するコツです。あまり焦ったりしない態度や、解ろうとしない態度が大切なのです。つまり、本能的に働く直観が大切なのです。
 ここにバーネットニューマンの言葉を引用しておきます。
「何かをできるだけこと細かに明確に描写すれば、見る者が想像力を働かせる余地はそれだけで少なくなります。イメージが曖昧であればある程、見る側の着想や思考がはいり込んでくる可能性が高まるのです。」

モンドリアン




デュシャン


ロスコ